担当者が書類とノートパソコンを見ながらデータの扱いを確認する様子
AIや分析にデータを使う前に、目的・範囲・確認の流れを整理します。

AIガバナンス・個人情報

個人情報をAIや分析に使う前に整理したいこと:目的・範囲・確認体制

AIやデータ分析に使う資料には、氏名のように人を直接特定できる情報だけでなく、他の情報と組み合わせることで個人や取引先が分かる情報、社外に出せない業務情報が含まれていることがあります。利用を急ぐ前に、何のために、どの範囲のデータを、誰がどのサービスで扱うのかを確かめましょう。

この記事では、データの把握から社内確認までを順に整理します。一般的な実務上の確認事項を示すものであり、特定のデータやサービスについて法的な結論を出すものではありません。

1. まず、データにどんな情報が含まれるかを確かめる

氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど、個人を直接特定しうる項目があるかを確認します。それだけではなく、会員番号、日時、地域、担当者名、自由記述の内容など、別の情報と照らし合わせると人が分かる項目にも注意が必要です。書類の本文や添付ファイル、画像の中に、一覧の項目名だけでは把握しにくい情報が含まれることもあります。

個人情報に限らず、顧客との契約内容、社内の人事情報、営業上の機密など、取り扱いに配慮が必要な情報が混在していないかも見ます。机上のデータ項目表だけで判断せず、適切な権限を持つ担当者が、実際の業務データから安全に確認できるサンプルを選び、通常例と例外例の両方を点検してください。分類や扱いは組織の規程とデータの実態に照らして決めます。

確認結果には、データの入手元、含まれる項目、閲覧できる人、更新や共有の経路も記録しておくと、後の判断や社内相談に役立ちます。

2. 利用目的を業務の言葉で定め、必要な範囲に絞る

「AIを試したい」だけでは、何のデータを使い、出力をどう扱うのかが決まりません。たとえば「受け取った問い合わせを担当部署ごとに振り分ける候補を作り、担当者が確認する」のように、対象業務、得たい出力、利用者、出力を使う判断を一続きで説明できる目的にします。

その目的に必要な項目だけを選び、不要な氏名や連絡先、自由記述を除けるか検討します。項目を削る、集計単位を粗くする、テスト用のデータを用意するといった方法が候補になります。氏名を置き換えたり、データを集計したりするだけで、あらゆるリスクが解消すると決めつけず、他の情報との照合可能性や利用環境も含めて確認しましょう。

目的が変わったときや、検証から日常業務へ広げるときは、利用データと閲覧者も改めて見直します。

3. AIサービスへ入力する前に、提供事業者の条件を確認する

サービスの説明や、実際に適用される契約・設定を確認し、入力内容がどの目的で利用されるのかを確かめます。特に、入力データがモデルの学習やサービス改善に使われるか、保存や削除がどのように扱われるか、アクセスできる範囲、処理に関係する委託先などは、利用するサービスや契約によって異なるため、推測せず該当する情報を確認してください。

あわせて、組織で利用を認めるサービスやアカウント、入力してよいデータの範囲、入力を避ける情報を整理します。個人用アカウントと組織の管理下にあるアカウントで条件が異なることもあり得るため、実際に使う環境を前提に判断します。条件が確認できない場合は、実データを入力する前に社内の情報管理担当者などへ確認してください。

許可された範囲を利用者が迷わず守れるように、利用可能なツールと入力ルールを手順書などで共有することも実務上の対策です。

4. 閲覧権限と、人が確認する場面を決める

誰がデータを準備し、誰がサービスを使い、誰が出力を確認するのかを明確にします。業務上必要な人に範囲を絞ったアクセス権限、利用や修正の記録、誤送信が起きたときの連絡先なども検討します。例外が発生した際に、処理を止めて確認へ戻せる手順があるかも確認しましょう。

AIの出力は誤りや曖昧さを含む可能性があります。影響の大きい判断を出力だけで確定せず、誰がどの根拠を見て承認するのかを決めてください。たとえば書類の分類を支援に使う場合、内容が読み取れない、必要情報が足りない、複数の分類に当てはまるといったケースを担当者へ戻す設計が考えられます。これは設計の一例であり、実際の手順は対象業務に応じて決めます。

試行中も、どの種類の誤りが起きたか、人による修正や確認にどの程度の作業が必要だったかを確認すると、継続や見直しを判断する材料になります。

5. 社内の確認先を通し、必要なら専門家へ相談する

実施前に、業務責任者、情報管理・セキュリティ担当者、個人情報の取り扱いを確認する担当者など、組織内で適切な確認先を特定します。社内規程、利用者向けのプライバシーに関する表示、取引先との契約、利用予定サービスの条件との整合を確認し、懸念点と決定事項を記録しておきます。

個別のデータの扱いが適切か、必要な表示や手続きが何かといった法的判断は、データの内容や利用状況などに応じて異なります。一般的な記事やサービス紹介だけで結論づけず、必要な場合は組織内の適切な担当者や、個別事情を確認できる専門家へ相談してください。

始める前に使える確認メモ

検討を具体化するときは、次の項目を一枚にまとめると、関係者が同じ前提で確認しやすくなります。

  • 対象業務と利用目的、AIや分析の出力を使う人・判断
  • データの入手元、含まれる情報、目的に必要な項目と除外できる項目
  • 利用するサービスとアカウント、入力データの利用・保管等について確認した情報
  • 閲覧できる人、出力の確認者、例外・誤送信が起きた場合の連絡と対応
  • 社内の確認先、未解決の懸念、試行を続けるか見直すかの判断方法

たとえば問い合わせ内容の分類を試すなら、最初に分類の目的と担当者による確認方法を決め、実データに何が含まれるかを点検します。そのうえで必要な範囲を絞れるか、利用する環境の条件を確認できたか、誤分類を人が直せるかを関係者と確認してから、限定した試行を検討します。